三人兄妹の末っ子がついに大学生になり、もともと全員が揃うことなど稀な食卓が、いっそう閑散としてきた。こうなると献立も限られてくるわけで、リアルタイム性が要求されるメニューは出しにくい。ラーメン、そば、うどん、しゃぶしゃぶなどはもってのほか。この時期を考えると生ものも遠慮したい。多方面から検討を重ねた結果、いつも候補にあがるのが「煮物」。何時に帰宅しても温めればすぐに食べられるし、むしろ少し時間をおいた方がおいしくなったりもするし、いちいち給仕をしてやる必要もない。ここでいう「煮物」とは煮込む料理のことで、和食に限らず世界各国には種々多様な煮込み料理があるので、バリエーションにも困らない。
煮込み料理に欠かせない調理器具といえば、なんといっても「鋳物ホーロー鍋」。黒い鋳物の外側にカラフルなホーロー加工を施したストウブやルクルーゼなどは、何に使うのかもよくわからないのに、つい大枚叩いて買ってしまう、おしゃれキッチングッズあるあるの代表格。鋳物の特徴は均一な熱伝導と蓄熱性、そして重い蓋による密閉性。素材のうまみを失うことなく、比較的短時間でしっかり火が通る。いいのはわかるけど高いからなあ〜という方に朗報。我が家のIKEYA製鋳物ホーロー鍋はなんと5,999円。ルクルーゼの五分の一以下の価格で性能は同等(たぶん)。しかも25年間品質保証付きという自信たっぷりの逸品なのだ。
まだせいぜい5、6年しか使っていないので、あと20年は壊れないとわかっていても、新しいものには目移りするのが人情。オレンジ色のルクルーゼには憧れるが、鋳物の産地で名高い埼玉県川口市のフェラミカや、新潟県三条市のユニロイなど、「厚さ2mm」という日本企業らしい加工技術で押してくる国産勢も捨てがたい。
ウンチクが長くなったが、今日のメインは牛モモ肉のトマト煮。ローストポテトとマッシュルームのソテーを添えて。(江森克治)