第七話 送りとプロポーショナル
前回文字の単位の話題で、日本活字の特徴はすべての文字が同じ大きさの正方形(全角)の中に収まっていることとお話しました。この正方形を「ボディ」または「仮想ボディ」というわけですが、今日はこのボディとボディの間隔のお話です。
「行間」という言葉が一般によく使われますが、これは具体的にはどことどこの間を指しているのでしょう。文字間、行間といった場合、これはボディとボディの間のすき間のことを指しています。一方似ている表現に「行送り」「文字送り」というのがあり、これはボディの中心から中心までの距離を指しています。つまり10ポイントの文字を、15ポイントの行送りで組版した場合、行間は5ポイントということになります。
文字間は通常の組版ではゼロであり、これを「ベタ送り」と言っていますが、近年主流になっているOpenTypeという規格には、「プロポーショナルメトリクス」という文字詰めに関する情報もセットされており、文字間をより美しく自動的に調整してくれるようになっています。「MSP明朝」の「P」はプロポーショナルの頭文字をとったもので、「P」がつくフォントは文字間を勝手に詰めてくれます。逆にいうとベタ送りはできません。原稿用紙に書いたようにすべての文字の送りを同じ幅で組みたい場合は、「P」がついていないものか、「等幅」とついたものを使うと良いでしょう。それでも、句読点や括弧などを勝手に詰められてしまう場合もあり、厳密にベタ送りな組版をするのは意外と難しいのです。
プロポーショナルという考え方は元々は欧文活字から来ているもので、ひと文字の大きさがだいたい同じ漢字圏に対して、MとIなどひと文字の幅が異なる欧文では、文字によって活字の大きさが違っていました。それをデジタル化するにあたり、隣り合う文字によって文字送りを変える「ペアカーニング」という考え方が採り入れられ、それが後年日本語組版の詰め組みに応用されたというわけです。