「ランサムウェア対策」と聞くと、少し身構えてしまうかもしれません。
専門的で、自社とは少し距離のある話に感じる方もいると思います。
でも実際には、ランサムウェアはすでに多くの企業にとって“どこかの会社の話”ではなくなっています。JIPDEC(一般財団法人日本情報経済社会推進協会)が2026年1月に実施した「企業IT利活用動向調査2026」では、国内企業1,107社のうち507社が、ランサムウェア感染による何らかの被害を経験したと公表されています。
約45%という数字からも、企業規模を問わず、現実的な経営リスクとして向き合う必要があることがうかがえます。
大切なのは、必要以上に怖がることではなく、「自社にとって何が備えになるのか」を落ち着いて考えてみることです。
ランサムウェア対策は、IT担当者だけの話ではなく、会社の信頼や事業継続にも関わるテーマになっています。
JIPDECも、ランサムウェア被害は特定の企業だけで起きるものではなく、どの企業でも起こり得るインシデントだと整理しています。
ランサムウェアは、IT担当者だけの問題ではない
ランサムウェアの影響は、単にパソコンやサーバーが使えなくなることだけではありません。
業務が止まる、取引先や顧客への対応が遅れる、社内が混乱する。そうした影響が積み重なることで、企業の信頼や売上にも影響が及びます。
JIPDECの公表資料でも、業務停止や顧客離れによる売上減少など、感染後の影響が示されています。
その意味では、ランサムウェア対策は情報システム部門だけに任せるものではありません。
「万が一のとき、どう動くか」「誰が判断するか」「どこまで復旧できる状態にしておくか」といったことまで含めて、会社全体で考えておく必要があります。
中小企業も、例外ではない
JIPDECは2026年3月27日の公表資料で、見出しとして「中小企業もランサムウェア被害の対象に」と示しています。
さらに分析ページでは、従業員299人以下の企業では感染割合は相対的に低い一方、復旧割合も14.0%と全規模で最も低く、感染した場合のダメージが特に大きいと分析しています。
中小企業では、セキュリティ対策にかけられる人や予算が限られていることも少なくありません。
だからこそ、「狙われないようにすること」だけでなく、「もし被害に遭っても止まり続けないようにすること」が大切になります。これは、現場感覚としてもとても大きなポイントです。
身代金を支払っても、復旧できるとは限らない
今回の調査で特に印象的なのが、身代金の支払いと復旧の関係です。
JIPDECの集計結果では、被害を受けた507社のうち、身代金を支払った企業は222社でした。
その222社のうち、「システムやデータを復旧させた」と答えた企業は83社、「復旧できなかった」と答えた企業は139社でした。
さらに、「被害に遭ったが身代金は支払わずにシステムやデータを復旧させた」と答えた企業も141社ありました。
この結果から見えてくるのは、「支払えば元に戻る」とは言い切れない現実です。
JIPDECの分析ページでも、2024年から2026年にかけて身代金支払い率は57.0%から43.8%へ低下しており、支払わない企業が着実に増えていると説明されています。
復旧できなかった企業の割合は依然として復旧できた企業より大きいものの、減少傾向にあるとも示されています。
つまり、被害後の判断にすべてを委ねるのではなく、普段からバックアップや復旧体制を整えておくことのほうが、はるかに重要だと言えそうです。これはJIPDECの一次資料から自然に読み取れる実務的な示唆です。
まずは「基本の備え」から見直したい
ランサムウェア対策というと、特別なシステムや高額な仕組みが必要だと思われがちです。
もちろん技術的な対策は重要ですが、その前に見直したい基本もあります。
たとえば、定期的にバックアップを取れているか。
バックアップから実際に復旧できるか。
緊急時の連絡体制が決まっているか。
委託先やクラウド利用先も含めて確認できているか。
こうした基本を一つずつ整えることが、結果的に被害を小さくすることにつながります。JIPDECの分析でも、企業規模によって復旧力に差があり、特に中小企業では人材や予算の制約が感染後の対応力に影響していると考察されています。
「うちは大丈夫」を見直すタイミングかもしれない
ランサムウェアは、遠い世界の話ではなく、すでに多くの企業にとって現実的なリスクになっています。
そしてその影響は、大企業だけでなく中小企業にも及んでいます。
だからこそ今必要なのは、必要以上に不安になることではなく、「自社の備えを見直すきっかけ」にすることなのかもしれません。
何かが起きてから慌てるのではなく、何かが起きても止まり続けないようにしておく。そんな視点で対策を考えることが、これからの企業にはますます求められていきそうです。
出典
一般財団法人日本情報経済社会推進協会(JIPDEC)「企業IT利活用動向調査2026」集計結果、関連分析ページ、および2026年4月16日公表の詳細結果案内。