企業が子どもと関わることは企業の未来を考えるということ

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株式会社リトプラ セールス/ ビジネス開発 小西恭平さん

江森:小西さんとは横浜市教育委員会の「はまっ子未来カンパニープロジェクト」の推進委員で長いことご一緒させていただいているにもかかわらず、きちんとお話する機会がなかったので、今日はとても楽しみです。まずは小西さんのお仕事をご紹介いただけますか。

小西:会社は株式会社リトプラといいまして、「リトルプラネット」というデジタルとリアルが融合した遊びの空間を提供する次世代型テーマパークを運営している会社です。本来はテーマパークをフランチャイズ展開で広げていこうというビジネスモデルなのですが、ここ数年はコロナで計画していたような事業ができなかったので、私たちが開発したアトラクションのライセンス販売をしたり、キッズスペースの企画・開発をしたりというようなこともやっています。

江森:人が集まれないという状況でのテーマパーク事業のご苦労は想像するにあまりあるものがあります。小西さんご自身のお仕事は?

小西:私はフロント全般といいますか、パークへの集客から法人営業まで、少人数の会社なので営業的なことは幅広くやっていますね。

江森:まさにデジタルのお仕事をされている小西さんに相談なのですが、私たちも単なる印刷からコンテンツビジネスに移行しているのですが、いまはコンテンツを紙媒体にすることで売上があがるのですが、これが紙媒体不要となったときに、デジタルコンテンツをどう展開していけばいいのかというのはすごく悩むんですよね。リトプラさんの場合は、パークを作って、そこにコンテンツを閉じ込めることで「入場料」という形で収益が上がるということですが、これからどうなっていくと思いますか。

小西:確かに入場料収入というのは収益の柱ではあるのですが、やはり入場料だけでは厳しいというのは私たちも認識しています。そもそも定員の制約がありますし、ファミリー向けという性格上、平日は集客が難しいという宿命があります。平日夜を大人向けにするなどの工夫もしていますが、やはりこれからはオンラインサービスを拡充させて、それとパークを融合させていくことで、付加価値を生み出していくということを考えていますね。

江森:なるほど、リアルとバーチャルが融合することで新しい価値が生まれるということですね。

小西:そうですね、私たちの世代はアナログからデジタルに移行していくんですけど、今の子どもたちはデジタルが基本で、そこからアナログを見ているというか、かえってモノがすごく貴重で新しく見えているようなんですよね。レコードを新しいテクノロジーとして認識していたり、「プリクラ手帳」や「写ルンです」が流行ったりしているそうです。

江森:それでも昔のように「モノであふれる」という状況にはならないんでしょうから、経済縮んじゃうんじゃないかと心配になりますよね。デジタルが教育に与えるインパクトというのも無視できないと思いますが、どう思いますか。

小西:僕が感じているのは、デジタル化されることによって人がやらなくていいことが増えるので、より人の良し悪しが浮き彫りになると思いますね。例えば保育園なんかわかりやすいんですけど、これまで完全に手書き文化だった現場にデジタルが入ることによって、保育士さんが本来の保育に使える時間が増えて、保育の質が向上するという事例が出てきています。これは小学校や中学校でも起こると思いますし、保育園よりももっと効果が大きいのではないかと思います。

江森:学校のデジタル化はどんな状況ですか。

小西:コロナが追い風になって一人一台のデバイスが普及して夢のような環境はできたのですが、はっきりいって学校ってあんまりいいデジタルコンテンツないんですよね(笑)。だったらウチでやれば良さそうなものなんですけど、スタートアップの企業のスピード感と全然合わないんですよ。でも僕は子どもは未来の象徴だと思っているので、企業が未来を考える上で子どもと関わることってものすごい重要なことだと思っているんです。

江森:昨年度の学習発表会のときに私も言いましたが、近年大人が忙しくなったからなのか、子どもを学校に押し付けて社会から隔離しているというか、子どもを別の生き物のように扱っているフシがあると思うんですよね。だから子どもの社会参加が遅れる、不登校やひきこもりにつながっていくんだと思います。子どもだって大人と同じ社会を生きる仲間として、一緒に社会の課題について考えることを早い段階からやっていけば、子どもは自然と社会に入っていけるんだと思うのですが。

小西:昨年東市ヶ尾小の総合の時間で、5年生にリトプラのアトラクションを企画してもらうという授業をやったんですね。それがとても良くて、江森さんがおっしゃるようにこちらも仲間として扱っていますからダメ出しもするし、子どもたちだけでなく先生とも真剣に向き合いながら作りあげていきました。これもここで終わりじゃなくて、もっと密に関わりたいですし、今はオンライン環境も整っているので、横浜市の小学校340校全部でやるのも不可能ではないと思うんですね。そのぐらいの規模になれば、本当に開発してパークに置くこともできるので、そうなると子どもたちの参画意識もあがるし、私たちも企業として子どもたちとの関わり方が変わってくると思います。

江森:我々は横浜市のキャリア教育プログラムである「はまっ子未来カンパニープロジェクト」に、もうかれこれ7年ぐらい関わっているわけですが、どのように見ていますか。

小西:先日推進委員会でも議論しましたが、まさに過渡期ですね。今後どうしていくのか新たな覚悟みたいなことが求められていると思いますし、極論すればやめるという選択肢も含めて、考える節目なんじゃないかと思います。教育委員会も覚悟が求められますし、企業側も目的を明確にして参加する必要があると思います。

江森:企業に対する説明が圧倒的に足りないですよね。現場の先生に説明させてるようじゃダメだよね。

小西:それは教育委員会のWEBサイトにも表れていますよね。企業はたいてい見るんだから、あそこにもっと企業に期待することとか、参加する上での方法論を書いておけばいいし、報告書の冊子もデータで見られるようにしておくべきですよね。我々推進委員ももっと名前を出していいから、企業から直接問い合わせできるようにするといいですよね。
たぶん企業の参加のスタンスって2通りあって、理念に共感して参加するタイプと、マーケティング志向で参加するタイプがあると思うんですけど、マーケティング志向だと企業側としても結果を出さないといけないし、とはいえたぶんあのプログラムで良い結果なんて出ないし、となると結局誰も得しないというか、みんな不幸になってしまいます。でも、主旨をきちんと説明すれば、企業側もそういうコンテンツを考えてくれるはずだと思うんです。

江森:まったくその通りですね。学校にそういう企業の思考の仕方がわかる人が皆無だというのが不幸なところですね。そういえば小西さんは今年度からPTA会長さんだそうですが、PTAにも同じような課題があるんじゃないですか?

小西:ちょうど今日の午前中に役員会があったんですけど、ウチの小学校は役員さんが全員仕事を持っている人なので、必要のないことはやめようみたいな話は出てましたね。そういう意味では変わっていくんじゃないかという気はします。

江森:僕はついにPTAはやらずじまいだったんだけど、PTAこそ一回解体すればいいんじゃない?と思いますけどね。役員だってみんな嫌がってくじ引きだのポイント制だのってやってるでしょ。傍から見てるとそんなに嫌なことやる意味あんのかね?って思いますね。

小西:PTA連合会を脱退したり、PTAそのものを外注したりしているところもありますからね。でも当事者になってみるとわかることがたくさんあって、やってよかったと今は思っています。

江森:PTAの本質的な役割って何なんですかね?

小西:ひとつあるなと思うのは、利己主義が横行する世の中で、ともすればうちの子さえ良ければと思いがちになりますけど、実は教育というのは利他の心に根差したたくさんの人のサポートがあって成り立っていることであって、そういう事実に強制的にでも目を向けることにつながるのは、PTAの意義なのかなと思いますね。

江森:学校と社会の風通しが悪くなってしまった現代社会において、かろうじてPTAが細いパイプを保っていると思いますので、学校を社会に開くつなぎ役として頑張ってください、会長!

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