東京都「社会的責任に配慮した調達に係る有識者会議」を設置

  • 2023年4月27日
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東京都は、公共調達を通じて、SDGsの理念を踏まえた社会的責任を果たすための指針(「(仮称)社会的責任に配慮した調達指針」以下「調達指針」)の策定を新たに検討するため、調達指針の方向性について有識者より意見の聴取を行うことを目的として、「社会的責任に配慮した調達に係る有識者会議」を設置したと、3月27日付け報道発表、4月10日に第1回会議を開催しました。

この有識者会議は、持続可能性に関わる社会的潮流や、都政が直面する課題及び都の調達の実態等を踏まえ、指針策定に向けた方向性について有識者より意見の聴取を行うことを目的としており、東京都が指名した8名の有識者から構成されています。委員の任期が2年に設定されていることから、2年程度の時間をかけて調達指針の方向性が検討されると見られます。

公共調達については、以前から価格だけで決定する競争入札のあり方に疑問が呈されており、特に市場の縮小局面において弊害が顕著であるといわれています。市場の縮小局面では、応札業者が仕事量の確保のために無理な価格設定をしやすく、そのことが環境負荷や人権侵害を招くことにつながりやすいためです。全日本印刷工業組合連合会では、2017年から産業戦略デザイン室内に「SR調達研究部会」を設け、公共調達における社会的責任と、公益に資する公共調達のあり方について研究を続けていました。またPHP総研やCSOネットワーク等の民間シンクタンクにおいても、同様の研究や提言がなされており、民間での研究が先行していました。
最近では、全国中小企業団体中央会が、昨年11月の全国大会決議の中で、「官公需受注における公共調達制度(戦略的政府調達)を新たに導入し、長期購入契約の対象の拡大などに努めること」を要望しており、公共調達における社会的責任の議論が広がりを見せています。

この流れを受けて、政府はサプライチェーン(供給網)全体で人権侵害を把握し改善する「人権デューデリジェンス」に取り組む企業を、政府調達で優遇する仕組みの検討を昨年9月から始めており、国においては人権保護の立場からの取り組みが進みそうです。

今回東京都が社会的責任に配慮した調達に関する検討を始めたことは、全国の地方自治体にも影響を与えると考えられ、今後地域の特色を踏まえた様々なスタイルでの公共調達改革が進められることを期待したいと思います。

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