色が持つイメージは人の気持ちに影響を与えるとされ、芸術分野だけでなく、商品の販売戦略にも活用されています。
楽しさや調和を感じさせるイメージを持たせたり、直接的に味を連想させたり、お腹がすいたと感じさせる色の組み合わせを利用するなど、さまざまな形で応用されています。
かつてオーストラリアで、ある商品のパッケージカラーを決めるための調査が行われました。
この調査の目的は、実は最も人に嫌われる色を選ぶことでした。
何の商品か分かりますか?
答えはタバコです。
色によって購買意欲や喫煙の欲求を減退させ、健康被害を抑えることが目的だったそうです。
採用された色はPANTONE 448C。

オーストラリアでは「オリーブグリーン」と呼ばれていましたが、「くすんだダークブラウン」という名称に変更されました。
選定理由は、「死」「汚物」「タール」といったネガティブなイメージを想起させる点にありました。
ほかにも、海外で不人気なカーキ系グリーンやくすんだイエローなどが候補になりましたが、
最も目立たず、健康被害の印象を強く与えるという点で、PANTONE 448Cに決定されました。
現在では、オーストラリアをはじめ、イギリスやフランスなどでも、紙巻きタバコのパッケージにこの色を使用することが義務付けられています。
このニュースを知ったとき、購買意欲を抑えるために色を活用するという考え方が非常に興味深いと感じました。
こうした事例を知ることで、発想の豊かさや柔軟性が養われるように思います。
「かわいそうな色」とも言われるPANTONE 448Cですが、アメリカの色見本企業「PANTONE社」は「すべての色は平等であり、PANTONE 448Cは深みのある豊かな土壌を思わせる色だ」とのコメントを発表しています。
※PANTONE 448Cは、アメリカの色見本企業「PANTONE社」の見本番号です。この調査では、PANTONE社の色見本が使用されたと推察されます。