第六話 文字の大きさの単位
鉛活字を用いた日本の近代印刷は江戸末期に幕府通詞の本木昌造らによって開発され、明治に入って本格的に普及します。日本活字の特徴はすべての文字が同じ大きさの正方形(全角)の中に収まっているということです。この正方形を「ボディ」といいますが、このボディの一辺の長さがイコール文字の大きさということになります。
本木昌造の時代、活字の大きさは「号」という単位で表しました。一番大きい初号活字は約42ポイント。その4分の1の2号活字は約21ポイント。そのさらに4分の1の5号活字が約10.5ポイントという具合に大きさが決められていました。明治期日本の公文書に使う活字の大きさが5号と定められたため、後に「ポイント」という単位が普及し、1962年にJISで「フォントの暫定的な基準」が設定された際に、10.5ポイントが標準サイズとなりました。Wordなどで標準サイズが10.5という中途半端なサイズになっているのは、5号活字にその源流があるというわけです。
ちなみに現代のパソコンで一般的に用いられている「ポイント」という単位はインチを基準にしています。元々は欧州発祥ですが、米国でも独自に発展し、微妙に大きさの違う「ポイント」が使われてきました。現在は1ポイント=72分の1インチとする「DTPポイント」が使われています。
もうひとつ忘れてはならないのが、これも日本独自の単位である「級」。級は活字に代わる「写真植字(写植)」に用いられたメートル法を元にする単位で、1級=0.25㎜です。印刷発注を担当したことのある方は「級上げ(Q上げ)」なんて言葉が懐かしいのではないでしょうか。級の良いところはなんといっても計算がしやすいところで、例えば12級の文字といえば12×0.25=3㎜幅なので、1行40字のベタ送りだと段幅が12㎝というように、とても計算がラクです。写真と同じで現像されるまで完成形を見ることができない写植では、すべて事前に計算した上で組版しなければならなかったため、級は必然の単位だったのかもしれません。