第十話(最終話) デジタルで広がるフォントの世界

近代印刷におけるフォント(言葉の定義はさておきあえて このように呼びます)の歴史は本木昌造が先駆けた鉛活字に 始まり、写真植字機研究所(写研)が開発した写真植字機(写 植)の時代を経て、コンピュータ上にデータとして存在する デジタルフォントへと進化してきました。デジタル以前は書 体別大きさ別に、活字や写植の文字盤といった物理的な「物 体」を製作しなければならなかったため、フォント開発には 莫大な労力とコストがかかりました。デジタル時代になって も、一文字一文字をデザインする労力は計り知れないものが ありますが、一旦データができてしまえば展開するのは容易 いので、近年新しいフォントが続々とリリースされています。

有料フォントの有名どころとしては業界トップのモリサワ にはじまり、フォントワークス、ダイナフォント、アドビフォ ントなどがあります。モリサワは、石井茂吉と共に写植を 実用化した森澤信夫が創業した会社ですが、今では印刷の 世界のスタンダードになっています。デザイン素材の販売サ イトであるデザインポケットでも個性的なフォントが多数販 売されています。

一方、無料フォントの代表格といえばGoogleフォント。 世界各国の文字が揃っており、日本語だけでも 51 書体が収録 されています。またフリーフォントの投稿サイトFONT F REEには、個性的なフォントが数多く投稿されており、商 用可能なものもたくさんあります。KFひま字、みかちゃん、 ミウラLinerなどはプロの世界でもすっかり有名になりま した。

たかが文字、されど文字。デザイン、字形、行送り、プロポー ショナル、文字セット…フォントの世界は実に奥が深く、知れ ば知るほど、微細な違いが醸し出す世界観の虜になること間 違いなし。明朝、ゴシックではおもしろくないからと安易に POP書体など使うことなかれ。明朝、ゴシックも書体によっ てがらっと雰囲気が変わります。好きな明朝、好きなゴシッ クを探しに、さあフォントの旅に出発しましょう!

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