近年、大手メーカーによるインキ使用量削減の取り組みが注目されました。
印刷において色をどう使うかは、見た目の問題だけでなく、
コスト削減や環境負荷の低減にもつながります。
さらに、環境配慮型インキへの切り替えを進めることで、
環境対応をアピールしながら、将来的なリスク回避にも取り組む企業が増えています。
このニュースをきっかけに、ふと動物たちの「色」にまつわる生存戦略を思い出しました。
昆虫や鳥、爬虫類には緑色の生き物がたくさんいます。
ところが、緑色の哺乳類はいません。
森の中で目立たないためには緑色が最適に思えますが、不思議ではないでしょうか。
実はそこには、生き物たちの合理的なサバイバル戦略が隠されています。
哺乳類が体内で作ることができる毛の色素は、
基本的に「黒〜茶色」と「赤〜黄色」の2種類です。
オフセット印刷や絵の具を思い浮かべると分かりやすいのですが、
これらの色を混ぜても緑色にはなりません。
では、進化の過程で、なぜ森に溶け込む緑色を獲得しなかったのでしょうか。
それは、肉食獣の多くが赤と緑を区別しにくいからです。
人間には、緑の草むらの中に茶色いシカがいることが分かります。
しかし肉食獣には、緑の草むらも茶色いシカも、
どちらも似たようなくすんだ黄灰色に見えるといわれています。
つまり、わざわざ緑色にならなくても、
茶色の毛皮のままで十分に背景へ溶け込むことができるのです。
必要以上に資源やエネルギーを使わず、今ある仕組みを生かして環境に適応する。
これは、自然界におけるとても効率的な「省資源」の考え方とも見えます。
一方で、哺乳類の中でも例外的に、ナマケモノが緑色っぽく見えることがあります。
実はこれは、毛に藻類が繁殖しているためです。
ナマケモノは緑がかった体によって天敵に見つかりにくくなり、
藻類はナマケモノの毛の中で水分や栄養を得て繁殖します。
さらに、ナマケモノはこの藻類を食べることもあるそうです。
自然界では、色はただ美しく見せるためだけのものではありません。
生き残るため、無駄を減らすため、周囲と共に生きるために、色が大きな役割を果たしています。
印刷物における色の使い方も、これからは「目立たせる」だけでなく、
「必要な色を、必要な分だけ使う」という視点がますます大切になっていくのかもしれません。