Scope1の排出量算定方法について

サステナビリティの流れが加速する中、環境の取り組みとして温室効果ガス排出量削減に取り組む、もしくは取り組みを検討する企業も増えてきました。温室効果ガスの排出量算定にあたっては、Scope(スコープ)という国際的な枠組みを使用することが一般的です。Scopeの概要については、以前記事にまとめていますので、そちらをご確認ください。(Scopeとは? 温室効果ガス・CO2排出量について
今回はより具体的に、Scope1の算定方法についてご紹介します。

まず最初に定義の確認からしてみましょう。
Scope1は「事業者⾃らによる温室効果ガスの直接排出」と定義されます。「直接排出」というワードがポイントとなっており、「直接」というのはまさに温室効果ガスを物質として生み出している、という意味合いです。Scope2・3についてはこの部分は「間接排出」という表現がされていますが、どちらについても、物質としての温室効果ガスは社外の設備によって生み出されているため「間接」と表現されており、Scope1の算定対象を考える上で「直接」というのは大きなキーワードとなっていることがわかります。では具体的にどういった場面で温室効果ガスが発生するでしょうか?

燃料使用での排出

最も想像しやすくまたその量も多いのが燃料を燃やす場面です。燃やすから温室効果ガスが出る、という非常にわかりやすい理屈です。
例えば電力会社でしたら、火力発電のために燃料を燃やして発電を行なっているわけです。ここで出る温室効果ガスは電力会社のScope1ということになります。(この電気を使用する企業にとっては、ここでの排出はScope2になるということですね)
あるいは鉄鋼業の場合は、鉄の生成のためにコークスを燃焼させその際に温室効果ガスが発生します。化学産業における廃プラスチックの処理についても、多くが焼却されている現状がありますので、ここでもまた温室効果ガスが発生しています。
いずれの場合でも、何かを燃やすことで物質として温室効果ガスが生成されていますから、Scope1の算定対象になるということです。

自社所有の車の使用

製造系の会社ではない場合には、うちの会社は燃やすという行為を行わないしScope1は関係のないものだ、と思ってしまいがちですが、実はそんなことはありません。それが自動車からの排出です。
例えば営業で社用車を走らせた時、ガソリン車でしたら排気ガスが出ます。排気ガスには温室効果ガスが含まれますのでこれもScope1の算定対象となります。事業に関連して発生する温室効果ガスについてはその種別を問わず算定の対象になるというのがポイントです。
また自動車の排出について注意が必要な点としては、車の所有権が誰にあるのか、という点です。自社が保有している場合はScope1として算定しますが、例えば運送会社に委託する場合は車の所有は運送会社ですので自社排出ではなくなり、Scope3の算定対象となります。あるいは出勤で自動車を使用するという場合もあるでしょう。この時、その自動車が会社所有のものであればScope1となります。しかしもし従業員が所有する自動車の場合は、Scope3のカテゴリ7「通勤」での排出としてカウントすることになります。このように自動車の所有権によって算定項目が変化する場合があるため、どの項目でカウントするのが適切かは注意しましょう。

その他温室効果ガスの排出

上記2パターンが代表的な排出源として挙げられますが、それ以外にも直接排出として生じうる項目はあります。
例えば農業の場合に、稲作の過程ではメタンの排出が起こります。あるいは畜産における、家畜からの消化管内発酵によるメタンの発生というものもあり、これらも事業の過程での排出とみなされScope1に該当します。また冷媒として使用されるガス類も温室効果ガスに該当するため、それらの排出についてもScope1の算定対象となります。
該当しない場合には全く関係のない項目ですが、該当する場合には盲点となりうる部分ですので、注意が必要です。

以上にご紹介したような項目がScope1に該当する項目です。これらの項目から、自社のScope1として該当する項目を抜け漏れなくピックアップすることが、次の算定のステップで正確な数値を導出するために重要です。項目のピックアップにあたっては、環境省のグリーン・バリューチェーンプラットフォームを参照いただくとより詳細な区分を確認できます。

次に実際にその排出量を算定する方法についてご紹介します。
Scope1の排出量は、基本的には公式に数値を当てはめることで算定が可能です。以下がその公式です。

CO2排出量 = 燃料使用量 × 燃料の排出係数

燃料使用量は文字通り、その燃料を使用した量を当てはめます。
ただし例えば自動車のガソリンなど、使用した量の計測が困難な場合もあります。この場合は、給油量の数値を代替としても使用するというアイデアがあります。給油量と使用量は厳密な数値は異なりますが、給油する=その分使ったということで論理的な説明が可能です。給油量であれば給油のレシートをためておけば、あとから数値の導出が可能です。このようにしっかりとした論拠があれば、運用しやすい数字を使って少しでも効率的に算定していただくことができます。

次に燃料の排出係数について。実は燃料ごとに排出係数という数値が決められています。そのため自社で使用している燃料の排出係数を調べてきてここに当てはめてください。排出係数は、環境省の温対法公表制度にて一覧でまとめらています。

また注意が必要な点として、農業でのメタン排出など、上記の使用量の公式では算定できないものもScope1には存在します。その他の算定方法等は環境省のグリーン・バリューチェーンプラットフォームに掲載されていますので、ご参照ください。

以上、Scope1の排出量算定についてご紹介しました。改めてポイントをまとめると、

  • Scope1は、自動車の燃料使用等により、自社の設備から物質的に温室効果ガスが発生するものが対象となる。
  • 算定の流れとしては、「該当項目のピックアップ」「使用する数値・データの収集」「排出量の算定」
  • 排出量の算定は、基本的には使用量×排出係数で算定可能。当てはまらないものもあるので注意

となります。Scopeそのものが過不足なく算定できることを目指した仕組みになっている都合上、どうしても例外があったり、一概にこう、と言えないため難しく感じてしまいがちですが、自社の排出ボリュームを正しく知ることは環境の取り組みを正しく進めるためにも重要ですので、ぜひ挑戦してみてください。

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また企業のサステナビリティの取り組み支援サービスも幅広く展開しています。

取り組みにあたって課題を感じていらっしゃる方は、ぜひお気軽に一度ご相談ください。

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