暑い季節がやってきました。「今年の夏は異常気象です」ということを毎年のように聞いているような気がします。異常が日常になっているとは、実に恐ろしいことです。生命の危機に関わることですので当然エアコンを使わざるを得ないわけですが、しかし同時に、電力ひっ迫など、節電ということも意識する必要があるわけです。
電気の使用ということになると、CO2の排出ということとおおよそセットになってきます。そして電気の使用に伴う温室効果ガス排出量は、Scope2という枠組みで算定することができます。
Scopeについての概要は別の記事でまとめていますので、そちらをご参照ください。(Scopeとは? 温室効果ガス・CO2排出量について)
また、Scope1の算定についても別の記事でまとめています。(Scope1の排出量算定方法について)
Scope2とは
まず最初に、Scope2の定義について確認していきます。
Scope2は「他社から供給された電気、熱・蒸気の使⽤に伴う間接排出」と定義されます。Scope1は「直接排出」という単語が使われていますが、Scope2では「間接排出」という表現になっています。Scope1の記事で紹介した通り、この「直接」というのは物質として温室効果ガスを排出しているという意味が含まれています。
対してScope2は、算定対象となるのは他社から供給された電気や熱・蒸気です。例えば電気で考えた時に、一般的には電力会社から電気を受け取ってそれを使用しているということになるでしょう。この電気を作る時に、火力発電だったら燃料を燃やしてその熱で発電している。しかし燃やすので温室効果ガスが発生するというプロセスになっています。だから電気を使うことで温室効果ガスが発生する、というロジックが成り立つわけですね。
ただこの時、電気を作るプロセスで物質としての温室効果ガスを排出しているのは、発電所(を所有している会社)ということになります。自社で物質として直接排出しているわけではないので、「間接排出」という表現が取られています。
では、次にどのような項目が算定対象としてあげられるかを見てみましょう。
電気の使用
定義に書いてあるのでそのままですが、電気の使用がScope2に該当します。おそらく電気を全く使わないで事業を行なっている企業というのは今の時代ではあり得ないでしょうから、どの企業も必ず算定対象として考えなければならない項目です。また多くの企業にとって、Scope2に該当する項目のうちの大半を占めているのもまた電気の使用でしょう。
電気に限った話ではありませんが、算定対象となるのは自社で使用している電気すべてです。例えば建設現場などで電気を使用する場合であったり、あるいは電気自動車を所有している場合にはその電気使用についてもScope2で算定します。オフィスや工場で使用している電気だけが対象になるわけではないという点は覚えておきましょう。
またテナントのビル内にオフィスを持っているという企業の方も大勢いらっしゃることでしょう。この場合は、自社が専用できるエリアで使用された電力が算定対象となります。基本的には自社オフィスで使用した分だけ算定すればいいということになります。
熱・蒸気の使用
電気に比べて該当する例は少ないでしょうが、該当する場合は熱・蒸気の供給もScope2の算定対象として考える必要があります。そもそも「熱供給」というものに全く馴染みがない、という方もいらっしゃることでしょう。私もScope2で聞くまではその存在を知りませんでした。
熱供給とは、熱供給事業者が水や蒸気という温冷媒によって熱を供給する仕組みです。供給先のビルなどの建物と供給元のプラントとが管で繋がっており、水や蒸気を送り、供給先の建物で冷たい水なら冷房に、熱いお湯や蒸気なら暖房や給湯などの熱源として使用するという構造です。熱供給事業自体、建物が密集している需給先の多いエリアを中心に展開しており、東京、名古屋、大阪などの都市部に事業者が集中しています。
そのため特に都市部のビルのテナントに入っているオフィスの場合など、知らないうちに熱供給のエネルギーを使用しているという場合があります。算定対象となるのは電気と同様で、専用部での使用分が自社での使用としてカウントされます。まずはそもそも自社の入っているビルが熱供給を受けているのかどうか、ビルのオーナーに問い合わせるのがいいでしょう。
Scope2の算定方法
次に実際に排出量を算定する方法についてご紹介します。
Scope2の排出量は、基本的には公式に数値を当てはめることで算定が可能です。以下がその公式です。
CO2排出量 = 電気(熱・蒸気)使用量 × 排出係数
使用量は文字通り、使用した量を当てはめます。電気の場合は、一般的に電力事業者からの請求書に使用量が記載されていますので、その数値を使用します。熱供給の場合も、自社が契約している場合は請求に伴って使用量が明らかにされているはずです。
しかしテナントで入っているオフィスだと、自社が使用している熱供給分を算定することが困難な場合があります。(熱供給については共益費などに含まれ具体的な数値が上がってこない場合がある)
この場合はビルのオーナーに問い合わせて自社で使用していると推定されるエネルギー量を算出してもらうか、あるいはビルの情報や自社での使用状況などを加味して推計する方法などを取るのが良いでしょう。
排出係数については、電気の場合は電力事業者・メニューごとに係数が定められています。環境省の温対法公表制度に掲載されている排出係数一覧から自社に該当する電力事業者の数値を参照してください。
なお、係数には『基礎排出係数』と『調整後排出係数』の2種類があります。調整後排出係数は、電力事業者によるカーボンオフセット分を考慮した数値となっており、基礎排出係数は考慮していない数値という点で違いがあります。Scope2の算定の場合は調整後排出係数を使用しておおむね問題ありませんが、より精密な算定を行いたい場合は、電力事業者に直接問い合わせて自社に適合できる排出係数を確認されると良いでしょう。
熱供給の場合も、事業者が明らかな場合は、温対法公表制度の排出係数から数値を参照してください。
まとめ
以上、Scope2の排出量算定についてご紹介しました。改めてポイントをまとめると、
- Scope2は、他社から供給された電気や熱供給による熱・蒸気が算定対象となる。
- 排出量は、使用量 × 排出係数で算定することが可能。
- 熱供給の使用量が明らかでない場合はビルのオーナーに問い合わせる。
となります。Scope2は算定対象となる項目が他のScope項目よりもかなり明確なので、何を計測対象とすれば良いのか、という洗い出しは比較的苦労せずに設定することができます。事業所が複数ある企業の場合は集計作業に苦労することはあるかもしれませんので、集計方法のスキーム確立はしっかりと行なっておきたいところです。取り組みとしても節電ということでイメージしやすい内容でもありますので、ぜひScope2算定・排出削減に取り組んでみてください。
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