浮世絵というと、北斎や歌麿など、
さまざまな色が使われたカラーの版画を思い浮かべる方が多いと思います。
このようなカラーで刷られた浮世絵は「錦絵」と呼ばれています。
鮮やかな色彩が美しく、ぼかしなどの細かい技法も楽しむことができます。
ここに辿り着くまでには長い月日がかかりました。
浮世絵には、直接描かれた肉筆画と、印刷物である木版画があります。
始まりは肉筆画でしたが、何枚も複製するには不向きでした。
一方、版画は大量生産が可能で価格もお手頃だったため広まり、
私たちがイメージする現在の浮世絵の形になりました。
版画は最初、墨1色から始まりました。
この頃は文章の挿絵として使われていたようです。
次第に絵そのものに人気が集まり、絵だけで作品として独立し、発展していきました。
その後、墨1色の絵柄に朱や青などで1点ずつ着彩する技術が発展し、
少ない色数ながらも色版画が刷れるようになりました。
さらに技術が進み、化学染料の発達も相まって、
江戸時代中期頃には色彩豊かなフルカラーの錦絵が刷れるようになりました。
この進展にはおよそ100年ほどかかりました。
ところで、大昔に作られたにもかかわらず、今でも残る鮮やかな色彩。
不思議ではありませんか?
これは顔料を紙の繊維の奥深くへ擦り込むように刷られているからだそうです。
すべてが手作業だったことへの驚きとともに、物づくりの真髄を感じさせられます。
手作業ならではの面白さはほかにもあります。
それが「初摺り」と「後摺り」の違いです。
「初摺り」は絵師の監修のもとに最初に刷られたもの、「後摺り」は増刷品を指します。
増刷を重ねるごとに技法や要素が変化しているものも多く、
ネットでも興味深い例を見ることができます。
調べてみると非常に楽しいです。