最近、コンパクトデジタルカメラ(コンデジ)が流行している。カメラ専門店でも軒並み売り切れ、入荷待ちという状態だ。
コンデジは、別名レンズ一体型カメラとも呼ばれ、スマホが普及する以前には最も手軽に買えるカメラという位置付けだったが、スマホのカメラの性能が高まるにつれ徐々に淘汰されるに至った。それがなぜ近年注目されるようになったのかといえば、若い世代が「エモい写真」を撮るために使いはじめたからである。
現代のようなSNS 時代にあっては、人々は写真に並々ならぬこだわりを持つことになる。少し前までは、加工アプリによって写真の見栄えをよくするのが一般的だったが、それだけだと他の人との差が出づらい。そこでまず注目されたのがフィルムカメラだった。フィルムはデジタルでは表現できない色味や粒状感といった独特な雰囲気があり、ここにエモさが見出された。しかしフィルム需要は全体では大きく減っており、原材料も高騰していることから近年価格の上昇が著しく、富士フイルムの「写ルンです」は2025 年4 月時点で27 枚撮りが2,860 円。これに加え現像代もかかるのだから、若い世代が手軽に楽しめるようなものではなくなってしまった。
フィルムは手が出ないということで注目を集めたのが中古のコンデジというわけだ。押し入れの奥底に親のお下がりが眠っていたりするので、導入コストが安く済むのが魅力。また最近のスマホだと自動で手ブレなどを綺麗に補正してくれるが、そういった機能がないこともかえって味であると良いように解釈されている。最近は無駄にブレている(ブレさせている)写真も多くみかける。
このようにして、もはや古いとか新しいとか関係なくコンデジが売れ、空前のコンデジブーム到来である。新しい技術が登場すると、その裏で古いものが再評価されるということは歴史的にもしばしばあるが、その「裏」を見抜ける審美眼というのも、目まぐるしい変化の中にある現代ではより重要なのかもしれないと感じさせられる出来事である。
実はまだブームが到来する前に、2013 年製の中古のコンデジを5 万円で購入した。それを最近売却したら、なんと同じ5 万円で売れた。ブームというのはすごいものだなと思いこのテーマを選んだ次第である。ちなみに売ったカメラは、その後13 万円で販売されていた。(発売当時の新品直販価格は9万9,800 円)