日本版排出権取引に向け、今年4月「GXリーグ」が本格稼働

民間企業にCO2排出削減を促す「排出権取引」。欧州では2005年から「欧州連合域内排出権取引制度(EU -ETS)」を運用しているほか、米国では2010年頃から地域や州ごとに段階的に導入。温室効果ガス排出量世界一の中国でも2021年から全国的に導入されました。このような世界情勢の中、導入に消極的だった日本政府もようやく動き出し、昨年2月に脱炭素に積極的な企業からなる「GXリーグ」構想を発表。440社の賛同を得て、現在排出権取引のルール作りなどの議論がなされています。今年4月以降の本格的稼働に向け、1月にはルールの提示、2月には賛同企業の中から正式な参画企業を募るというスケジュールで進めていくとのことです。

排出権取引とは、一定のルールに基づいて企業ごとに排出量の上限値(キャップ)を定め、上限値より少なかった余剰分を温室効果ガスを排出する「権利」として、上限値を超えてしまった企業に売却(トレード)することで、全体として排出量を削減していこうとする仕組みのことで、「キャップ&トレード方式」と呼ばれます。政府が価格を決めて超過分を税として徴収する「炭素税」に比べて、権利を売却できる排出権取引の方が削減のための企業努力を促す効果が高いとされます。一方で、過度な排出権料の負担によって企業の競争力が低下したり、排出権取引を導入していない地域に企業が移転しまうリスクがあるとも言われています。日本での導入が遅れた一因として、電力や鉄鋼など排出量の多い業界からの強い反対があったことはよく知られています。

政府は、カーボンニュートラルへの移行に果敢に挑戦する企業に対し、「GX経済移行債(仮称)」などを活用しての資金支援策も検討しています。一方で、企業の取り組みを監査する第三者認証機関などによる監視体制強化も検討しており、より公平で実効性のある取り組みにしようとの意気込みが感じられます。産業部門で特に排出量の多い、鉄鋼・化学・紙パルプ・セメントなどの産業においては、今ある技術だけでは削減目標を達成できない可能性が高く、革新的な技術開発が求められます。紙を使う産業の一員として、注意深く見守っていく必要があると感じています。

カーボンニュートラルについては世界に大幅な遅れをとっている日本。脱炭素を国民が「我がこと」として認識し行動していくためにも、排出権取引は欠かすことのできない制度です。「GXリーグ」の成功に期待したいと思います。

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