長く続いたデフレの本格的な脱却に向けて、政府では「価格転嫁」促進のための、中小企業の取引条件の改善を進めていますが、さらに強力に推進すべく、本年3月下請法改正が閣議決定されました。来年の1月より施行されます。
今回の改正では、特に支払条件の改善がなされ、手形払いが禁止されたほか、発注側が一方的に代金を決定したり、協議を受け付けない行為の禁止が追加されました。
また下請法適用事業者の要件として、従来の資本要件に加えて従業員規模の要件が追加され、300名以上の企業も規制の対象となりました。
手形払いの禁止については、かねてより紙の手形を廃止する動きはありましたが、下請法対象取引については、完全に廃止となりました。また電子債権やファクタリング等の代替手段についても、納品日から60 日以内という下請法上の規定を守れない場合は使用禁止とされています。
受注側が弱い立場に立たされやすい、いわゆる下請け取引においては、受注側が価格について交渉しづらい場合が多く、原材料費や人件費などが上がっていたとしても、「昨年と同じ」というような条件を押し付けられることが常態化しています。今回の改正では受注側が価格交渉をしやすいように、発注側が協議に応じないことを禁止しています。
下請法は資本金1千万円以下の企業への発注に対しては、資本金1千万円以上の企業が規制の対象になりますが、この要件を逃れるために大規模な企業であるにもかかわらず、あえて資本金を1千万円以下に設定するような、いわゆる「下請法逃れ」を防止するための措置として、従業員300名以上という条件も追加されました。
さらに今回の改正に合わせて、そもそも「下請」という言葉の使用を改めようということで、「下請事業者」を「中小受託事業者」に、「親事業者」を「委託事業者」に改めることも決定されました。
政府は、デフレ脱却と着実な経済成長を目指し、引き続き価格転嫁と中小企業の取引条件改善を進めていく考えで、民間だけでなくGDPの約3割を占める官公需取引についても改善を検討している模様です。
全日本印刷工業組合連合会でも、中小企業全体の取引改善に向けて積極的に活動しており、引き続き当社も協力してまいります。