下手の横好き 僕のやめられない話

生成AI や色々なデジタル・デバイスの進化は日々目覚ましく、ついていくのも精一杯だ。一般的に、こういった新しい技術やモノは、より優れた価値をもたらしてくれるものだ。しかし、新しいことが絶対的な正義ということにならない、いや、なれない分野も存在する。

楽器はまさにその一つであり、有名どころで言えばヴァイオリンのストラディバリウスは300 年以上前に作られたものであるにも関わらず、そのトーンを再現することは未だに不可能とされている。ただ興味深い話もあり、ある実験で、プロの演奏者にストラディバリウスと現代に造られた新品のヴァイオリンとをブラインドテストしてもらい、どちらが優れた音かを問う実験では、なんと後者を選ぶ人の方が多かったというのだ。つまり、本当に音が良いかどうかよりも、高くて貴重だから良い音がするように感じているだけ、という可能性が示唆されたということになる。(しかもストラディバリウスを使うようなプロの演奏者が!)

実は僕の趣味のエレキギターにもヴィンテージ市場があり、ずいぶん珍重されている。エレキギターなんてせいぜい80 年くらいの歴史しかないし、しかもエレキなのだから直感的には古いものが優れているというのは理解しがたい。それでも黎明期の1950 ~ 60 年代のギターは数百~数千万円という値がつくほどのプレミアとなっており、普通の人には手に入らないので、最近ではついに1980 年代も「ヴィンテージ」にカウントされるようになってきた。それくらい、多くの人に“古いこと” の価値が認識されている。

先のストラディバリウスの例もそうだが、古いことでそのまま良い音がする、というわけではないのは確かだろう。それでもヴィンテージが魅力的なサウンドを生み出す理由として、楽器そのものが持つ歴史やバックグラウンドも大きく影響しているのではないかと思う。過去の偉大な演奏家たちが使っていたものと同じ年代の楽器、という歴史を背負うことによって、自己暗示的に良い音を奏でられるようになる、ということだ。要は気持ちの問題ということではあるが、結局気持ちが乗らないと良い演奏なんてできないのである。こういう曖昧な価値こそ、機械やAI ではなかなか表現できない、人間らしい特徴の一つなのかと思ったりもする。

ちなみになぜこんな話をしたかというと、最近僕もヴィンテージのギターを手に入れたから。当時から不人気なモデルで年代に対してずいぶん安かったのはラッキーだった。

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