地域の人たちと一緒に地域の課題を解決できる会社に。

  • 2019年4月23日
  • 2020年12月11日
  • JO対談

株式会社太陽住建 代表取締役 河原勇輝さん

江森:この度は平成30年度の横浜型地域貢献企業プレミアム企業表彰おめでとうございます。弊社も一緒に受賞させていただき大変光栄に思っています。太陽住建さんが受賞された取り組みは、建物オーナーから屋根の上を借りて太陽光パネルを設置し、売電で収益を得る「屋根借り」の事業に、障害者の就労支援を組み合わせた取り組みでしたが、始められたきっかけはどのようなものだったのでしょうか。

河原:以前大和市環境管理センターの施設に屋根借りの提案を行ったところ、屋根を貸すこと自体は良いけれども工事は地元の企業に発注して欲しいと言われました。当初は地元の会社に当社から工事を発注することも考えたのですが、それよりは工事の面でも地域に貢献できることはないかと思い直しました。いろいろと検討しているうちに、ちょうどその建物の近くに障害者就労支援施設があることを知り、利用者さんたちで工事をやってみませんかとご提案したところ、最初は怪しまれもしましたが(笑)、やってみようかということになったのが始まりです。

江森:なるほど、それは行政としても一石二鳥ということですね。

河原:そうです。その取り組みが横浜市にも伝わり、現在横浜市では福祉施設屋上で福祉避難所自家消費モデルと障害者の就労支援を結びつけた事業を展開しています。現場に近い作業所の利用者さんが工事を手伝いに来てくれるのですが、工事を体験した方はとてもやりがいを感じていただいているようで、中にはその後大手企業に就職された方もいたり、実際の就労にもつながっています。

江森:それはすごいですね。私が感心したのは、工事を経験した方がその後就職できたのかどうかというところまで太陽住建さんが追跡して、きちんとデータを取っているということです。そこまですることでこの取り組みの目的が、太陽光発電の施設を増やすことによる「温暖化対策」だけでなく、「障害者の就労支援」という社会課題解決でもあることが明確になりますよね。工事を経験した方のその後を追いかけようと考えたのはなぜですか。

河原:先ほども言ったように、現場の近くの施設の方に来ていただくので、私たちがお願いする仕事としては基本的には単発で終わってしまうのです。でもとてもやりがいを感じて一生懸命働いてくれますので、その人がその後どうなったのかというのはとても気になりますし、また彼らが私たちと関わったことでどういう成果があったのかということを確認したいと思いました。 今はひとつの現場ごとにお手伝いいただく形ですが、ゆくゆくは自社での雇用につなげられればと考えています。

江森:特に建設業においては人手不足が深刻なようですから、新たな人材確保の手段としても期待できますね。

河原:そうなんです。今はとにかく職人さんが足りなくて、各業者で取り合いの状態ですから、工程管理も大変です。そんな中で障害のある方たちの活躍というのは本当に助かっています。

江森:作業の切り出しなど障害者が活躍できる作業のノウハウを蓄積することで、新しいビジネスになる可能性もありますね。とても夢のある取り組みだと思います。

 その他にはどのような取り組みをされていますか。

河原:いま特に力を入れているのは空き家の活用です。南区は「放置空き家」が市内でも特に多く、以前から空き家のことは気になっていたので、おひさま広場で開催した「リビング・ラボ」で空き家について話そうと呼びかけたところ、この界隈の方たちが60名ぐらい集まってくれて、意見交換したのがきっかけで事業化することになりました。

江森:確かに空き家問題は以前から社会問題化していますが、行政もなかなか有効な対策がとれていませんよね。

河原:空き家にもいろいろあるわけですが、私たちが社会課題と認識しているのは、子どもたちは独立してみんな家を出てしまって、両親だけで住んでいたけれども、その両親も亡くなってしまって今は空き家になっている。思い出もあるし壊そうにも壊せない、かといってこのままにしておくこともできないけど、どうしていいかわからない、というような物件です。実はこのようにきちんと管理はしているのだけれども、誰も住んでいないという空き家がかなりあるのです。

 私たちはアーバンデザインセンター「おひさま広場」を運営してきたノウハウを活かして、このような空き家をおひさま広場のような地域の活動拠点として活用するという事業を始めました。

江森:つながってますね〜。活動に無駄がない。

河原:第一弾として磯子の空き家を借り上げてリフォームし、2階の4部屋を事業者の方に貸して、1階は地域に解放されたスペースとして使っています。1階が地域の活動拠点であることにメリットを感じる事業者の方に入居していただくことによって、1階で頻繁にイベント等が開催されますので、多くの人が出入りする場所になります。

 例えば、フリーランスのIT技術者の方は、1階のスペースで子ども向けのプログラミング教室を開催していますし、2階を事務所として使っている美容院の方は、月2回ぐらいワンコインの子ども向けヘアサロンを開催しています。第二弾の中区の物件では、1階をコワーキングスペースにする計画です。

江森:建築屋さんの場合、商売優先に考えると、古い建物を壊して新築を建てることを選んでしまいそうなものですが、あえて思い入れのある建物を壊さずに活用するというのがとてもいいですね。オーナーさんもうれしいし、地域の人も、太陽住建さんもうれしい。まさに三方良しの取り組みだと思います。

河原:私たちは工事屋ですから、むしろ壊さずに、今あるものを活かす方が強みを発揮できると考えています。

江森:空き家となると耐震性なども気になるところですね。

河原:私自身被災地をあちこちまわって支援活動をしてきましたが、その活動を通して、日本は地震大国でありながら、意外と堅牢な建物が少ないということを知りました。そこで、現在事業展開している空き家には、その一角に「耐震シェルター」を設置し、さらに太陽光発電と充電バッテリーを組み合わせて「オフグリッド」にし、災害時の一時的な避難所として利用できるようにしていく予定です。

江森:なるほど、部屋の中に頑丈な部屋をもう一つ入れてしまうようなイメージですね。多少家が傾いたとしても、この中にいれば安全ですし、電気もあるとなれば、地域の人たちには心強いですね。

河原:この仕組みがあることで、町内会などと連携しやすくなります。いざというときにお年寄りや障害をもった人たちの受け入れ場所になるということであれば、空き家を地域の拠点にすることに賛同してもらいやすくなると考えています。太陽光にしても空き家にしても、私たちの事業ではあるのですが、地域の方々と一緒に地域の課題を解決していきましょうということで、目標もオープンにしてみなさんと共有しています。

江森:創業10周年ということですが、成長著しいというか、外から見ていてもどんどん変わっていくのがわかります。創業当時からCSRを意識していたのですか。

河原:全然そんなことないです。創業当時はほんとに仕事がなくて、アパートの原状回復の仕事をしに東京まで行って、往復の交通費引いたら何も残らないみたいなことをやっていました。本当は近隣の方から仕事をいただけるのが良いのですが、何せ地域のことなんて何も知りませんでしたし、地域の方にも仲間として認められていませんから、仕事なんて頼まれるはずもないですよね。それで「これはまずい!」ということで、近所の掃除から始めて、そうしているうちに近所の方と顔見知りになって、少しずついろいろなご相談をいただけるようになりました。3年目に横浜型地域貢献企業の最上位認定をいただいて、江森さんや石井さん、大川さんといった、ずっと前から地域活動をされている社長さんたちとご一緒させていただくようになって、また一段成長できたように思います。その後月に一度、江森さんにも講師をしていただいた「お客様会議」という、外部の方を招いての勉強会を開催して、社員みんなで先進的な取り組みを伺うことで、社員たちが自分たちの仕事を通していかにお客様に感動していただけるのかということを考えるようになったと思います。

江森:これから太陽住建をどんな会社にしていきたいですか。

河原:まずは太陽光と空き家という2つの事業をしっかりやって、本業を通じて社会課題を解決できる会社になっていきたいと思います。その上で、地域で何か困ったことが起きたときに、まっさきに太陽住建が頭に浮かぶ存在になれるように努力していきたいと思います。

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