障害を「知る」の一歩先にある「かかわりが創るやさしい社会。

  • 2019年1月1日
  • 2020年12月11日
  • JO対談

NPO法人日本補助犬情報センター専務理事兼事務局長 橋爪智子さん

江森:視覚障害者のための盲導犬、聴覚障害者のための聴導犬、肢体不自由の人のための介助犬、この3つを総称して「補助犬」と呼び、橋爪さんはこの補助犬の理解・普及と障害者の社会参加を目的に活動をされていますね。日本ではいつ頃から補助犬が普及し始めたのでしょうか。

橋爪:日本にはじめて盲導犬が誕生してから70年になります。当初は道路交通法に視覚障害のある人が道路を歩く時の手段として、白杖を持つか、盲導犬を連れて歩くことが定められただけで、乗り物に乗っていいとか、建物に入っていいなどというアクセス権は一切認められていなかったというか、法律に明記されていなかったのです。

江森:なるほど、近年店舗などで、補助犬の権利について知らないばかりに、ペットと混同されて補助犬の入場が拒否されるということが起きているそうですが、昔は断ってもよかったわけですね。

橋爪:そうなんです。そこでそれではいけないということで、20年ぐらい前に介助犬が登場したのをきっかけに、介助犬、盲導犬、聴導犬の3つを「補助犬」と総称し、補助犬のための法律を作ろうと動き出しました。政治家の先生方も超党派の議連を作って動いてくださり、日本補助犬情報センターの活動が始まって4年後の2002年に「補助犬法」という法律ができました。

江森:補助犬自体は70年前から活躍していたけど、社会的に権利を認められたのは16年前、まあ最近といえば最近ですね。それであまり認知されていないということなんですね。

橋爪:法律ができた当時はメディアにも取り上げられましたし、飲食店などでも大きな犬がお店に来るらしいなどと噂になっていたようですが、一時的なもので社会に浸透するというところまではいきませんでしたね。

江森:日本に補助犬はどのぐらいいるのでしょうか。

橋爪:現在1074頭です。

江森:それは、多い?少ない?

橋爪:障害者手帳をお持ちの視覚障害の方だけで約31万人といわれていますので、微増はしていますが、絶対数としては全然少ないです。

江森:なぜ増えないのでしょうか。

橋爪:補助犬の育成は第2種社会福祉事業に指定されているのですが、社会福祉事業とはいいながら、公的助成では経費をすべてカバーすることができず、その事業費の多くを寄付で賄わざるを得ないという事情があります。ロボットではありませんので、大量生産できないのは当然なのですが、10頭訓練しても、実際に補助犬として仕事ができるのは3〜4頭という狭き門のため、資金不足ともあいまって、なかなか補助犬が増えないというのがひとつの理由です。

 また障害者の高齢化ということもあります。近年では高齢になってから視覚障害になる方が多く、そういう方が盲導犬を持つのは難しいです。また今まで盲導犬を利用していたんだけど、歳をとったからもうやめるという方もかなりいます。

江森:確かに昔の方が街で盲導犬をよく見かけたような気がします。私が電車に乗る時間帯の問題もあるのかも知れませんが。若い方は盲導犬を持たないのですか。

橋爪:それも大変大きな問題です。「障害者の自立と社会参加の促進」というのが補助犬法の中にも謳われている目的なので、いま自立してバリバリ活躍されている方に持って欲しいのですが、どうも負担感の方が大きくなってしまっているようです。同伴拒否されるし、荷物は増えるし、なんか大変そう。それなら自分一人の方が楽だと思われているのではないかと思います。

江森:実際には盲導犬と一緒なら助けられることも多いんでしょうね。

橋爪:そうです、そうです。1回でも盲導犬と生活した方は、行動範囲も広がりますし、一緒にいてくれて良かったと皆さんおっしゃいますね。

江森:今まで一人では行けなかったところに行ってみようという気持ちにもなるかもしれませんね。補助犬の飼育費用は誰が負担するのですか。

橋爪:ユーザーさんのところに来たら、それ以降はユーザーさんの負担です。年間24万円程度ですが、これを負担できるぐらいの責任能力のある方でないと持てませんので、そのあたりもハードルになっているかもしれません。

江森:補助犬の理解が広がるための何か良いアイデアはありますか。

橋爪:魔法の特効薬みたいなものはなかなかないですね(笑)。これまで私たちも補助犬の情報を一生懸命お伝えしてきたのですが、最近そこではないなと感じていて、時間はかかりますが、補助犬を通じた障害理解を進めていくようにしています。障害のある方がこういうことに困っていて、それはほんのちょっとしたサポートですごく助かるんだということを伝えていくことで、まずは障害者への理解を進めて、それが当たり前になれば、補助犬の理解も当たり前になるのではないかと思って、啓発活動に力を入れています。

江森:ここからは、橋爪さんご自身の話を伺いたいと思いますが、この活動はいつ頃からやっているのでしょうか。

橋爪:私は京都出身なのですが、京都の大学を卒業して、そのまま京都の損害保険会社に入社して、普通にOLをしていました。大手の代理店さんの担当として、毎日大きな金額の数字を扱って、とにかく一生懸命働いてました。でもあるときとうとう身体を壊してしまって、こんなことやってる場合じゃないな〜と思っていたときに、ニューヨークでアニマルセラピーをしている日本人女性のことをテレビで見たんです。元々動物好きだったこともあるのですが、なんて素晴らしい活動なんだろう!と感動してしまって、私もこれをやりたいと動物介在療法の勉強を始め、その中でいまのNPOの理事の人たちに会ったというのがきっかけです。19年ぐらい前ですかね。

江森:理事の方は、どういう方たちなのですか。

橋爪:動物介在療法や動物と人間の関係などについて研究をされている人たちで、医師や獣医師、動物福祉などの専門家たちです。そこでお手伝いをしているうちに、実はNPOを立ち上げるのだが事務局をやってくれ、ついては東京に出てきてくれというので、思い切って上京して、30代目前にして初めての一人暮らしを始めたというわけです(笑)。

 事務局といっても補助犬のことも障害のことも何も知らない状態でのスタートでしたから、補助犬のユーザーさんご本人に障害のある方へのサポートの仕方を教えていただきました。本当に皆さんによくしていただいて、私がいま社会に伝えたいことというのは、全部そのときにユーザーさんから教えていただいたことなんです。だから大好きなユーザーさんたちが、苦労せずに社会参加できるようにしたいなという思いでやっています。

江森:NPOとしては現在どのような活動をされていますか。

橋爪:2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けての活動ですね。こんなチャンスはもう2度と巡って来ないというぐらいの気持ちでいます。これまでもいろいろな活動をしてきましたし、情報発信もしてきたのですが、これからは「かかわり」を作ることが大事だと思っています。障害に関する知見というのは、知ろうと思えばインターネットなどでいつでも手に入れることができますが、「かかわり」がない限りは本当の理解には至らないことを、これまでの活動で学びました。協進印刷さんにもご協力いただいた「ありがとう運動」は、ユーザーさん自身が、社会の人々と積極的に「かかわり」を持とうとする活動ですし、若い世代向けにツイッターを使った企画をしたり、寄付付き商品を販売したりと、誰もが身構えることなく「かかわり」を作ることができる活動を展開しています。

江森:飲食店による活動も始まっているようですね。

橋爪:恵比寿では補助犬フレンドリーなお店100店を目指そうと、ローカルメディアの恵比寿新聞さんが店舗に呼びかけて自主的な活動を展開してくださっています。またいま私たちがいる「SHAKE SHACK」さんは、お店ごとのチャリティパートナーに売上の一部を寄付する取り組みをされています。みなとみらい店とテラスモール湘南店は、当NPOとのパートナーシップにより、“コンクリート「Bayside  Create」”の売上の5%を寄付してくださっています。

江森:障害のある方たちと接すると本当にたくさんの気づきがあって、人生が豊かになった気分になります。障害のあるなしに関わらず、互いに助け合える社会を目指して、今後の橋爪さんのご活躍に期待しています。

SHAKE SHACKみなとみらい店
「シェイク シャックに関わるあらゆる方々や企業、地域のために我々ができることを」というブランドミッションのもと、レストランの枠組みに捉われないさまざまな活動を展開中。http://www.shakeshack.jp
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