石井造園がここにあることの価値をもっと高めていきたい

  • 2018年7月31日
  • 2020年12月11日
  • JO対談

石井造園株式会社 代表取締役 石井直樹さん

江森:直樹さんは、横浜型地域貢献企業認定制度(以下横浜の認定制度)立ち上げの頃から、まさに一緒に育ててきた仲間なわけですが、認定以前にすでにISO9001に取り組んでおられたとはいえ、CSRをマネジメントシステムで回していくという認定制度の設計思想は初めからピンとくるものがありましたか。

石井:ISOをやっていて一番おもしろいのはマネジメントレビューなんです。社員たちの品質向上に対する取り組みについて、客観的な資料と内部監査の結果をもとに、社長として次の手をどう打っていくかを判断するというところがとてもエキサイティングです。だからCSRのマネジメントシステムもまったく違和感はありませんでしたね。

江森:でも、そこがなかなか理解できていない人が多いですよね。ISOはやるけど、CSRをマネジメントシステムで回すということに真剣に取り組む会社が少ないのはどうしてだと思いますか。

石井:それはCSR、特に地域貢献がボランティアの域を出ていないからでしょう。例えば工場では5S運動というのをやるでしょう。あれは掃除をしたり整理整頓をしたりすることが、作業効率のアップにつながり、ひいては経営にも良い効果をもたらすことが想像できるからすんなり受け入れることができますよね。それがCSRになったときに、経営につながってくる、利益につながってくるという理解がなされないということでしょう。

 よく「CSRは儲かります」という講演をさせていただきますが、それは何も直接的に売上が上がったり、利益が上がったりするのを狙っているということではないんです。CSRの取り組みを見える化することで、自分が世間から「見られている」と感じ、自ら襟を正すことで企業価値が少しずつ上がっていく。それを積み重ねていくことによって、「儲ける」のではなく、結果として「儲かっている」ということなんです。

江森:横浜の認定制度をベースにして、全印工連CSR認定制度を作り、こちらでも直樹さんには認定委員としてご協力いただいていますが、印刷業は今とても変化率の大きな業界だけに、全国の同業の皆さんにはCSRの本質に気づいていただきたいと思っていますが、なかなかうまくいきませんね。

石井:それには現在ツースターやスリースターを取得しているCSR先進企業が、しっかりと事実に基づいて社会にお示しするということが大事になるでしょうね。CSRに取り組んでいる企業が、社員が生き生きと働き、行政や地域社会からも評価され、決算上の業績も良いということを証明する使命が、上位の認定企業にはあると思いますね。

江森:そういう会社がたくさん出てくると経営者の意識も変わっていくでしょうね。

 話は変わりますが、最近の取り組みでこれこそザ・CSRだ!というのはありますか。

石井:賞をもらったということでは、はまっ子未来カンパニープロジェクトかなあ。このプロジェクト自体は横浜市教育委員会のキャリア教育事業ですが、我々は地域の先生として、本物のプロの技を伝えることができるという考えのもと、各小学校で小学生と一緒にビオトープを作ったり、学校全体を使った壮大なピタゴラスイッチを作ったりという活動をしました。その活動が評価されて、文科省の「平成29年度青少年の体験活動推進企業表彰」をいただきました。

江森:その活動によって、どのような効果がありましたか。

石井:まずは、子供たちに「造園業」という仕事を知ってもらえたこと、そして地域の方たちに石井造園の存在を知ってもらえたことです。認知度が上がればゆくゆくは受注につながってくるということはすでに実証されています。また文科省の表彰など後から権威付けしてもらえることで、じわじわと評判が良くなってくるという効果はあると思います。

江森:取り組みに対する評価は、どのように実施していますか。

石井:子供たちにはアンケートをとっています。とはいえ、ほとんど全員が「楽しかった」と答えるので、「楽しかった」を基準点として、自由解答欄のコメントからそれ以上の点数を自分たちで判定してつけています。その上で目指すのは85点以上として、毎回改善をしながらより良い取り組みにしていくように努力しています。また、間接的ステークホルダーに対しては、表彰やメディア掲載などで測っています。数値化はまだできていませんが、表彰されたりメディアに載ったりしたら、間接的ステークホルダーにもメリットがあったとみなしています。

江森:経営への効果という面ではどうですか。

石井:社員の意識や人間力の向上ということがあげられると思いますが、本人にこの事業をやってどうだったか直接聞いたり、上司に仕事ぶりが変わったかどうかを尋ねたりして測定しています。

 また、もうちょっとリアルな仕事も含めた評価という意味では、お客様からいただいた顧客満足度のアンケートをホームページで公表しています。公表することで担当者としては一生懸命やらざるを得ませんし、作業開始時刻や服装などについての質問を入れることで、労務管理や安全衛生管理にも繋がっていきます。

江森:横浜の認定制度についてどのように感じていますか。

石井:現在認定数が459社を数えるまでになって、一定の市民権を得たと思いますし、名刺交換をした方が偶然認定企業だったということも増えてきました。私は企業経営という手法を使って社会を変えていくということは十分できると考えています。そういう意味では企業の力をもって社会の諸問題を解決していこうという企業がもっと増えていくといいと思いますし、もっとがんばってやろうよと呼びかけたいですね。

江森:社会を変えていくときに政治というのは確かに有効な手段だとは思いますが、あくまでも主体は私たちだと思うのです。それは市民であり、企業であり、NPOであるわけですが、その人たちが社会という物語の主人公なのです。政治は頼るものではなく、使うものだと思いますね。

 とはいえ、政策には確かに影響力があり、その典型的な例が横浜の認定制度における公共工事のインセンティブ発注だと思いますが、まさに公共工事の当事者としてどのように見ていますか。

石井:認定企業の中には公共工事において倫理から外れるような工事をしたことによって、指名停止になった企業がいくつかありますが、地域貢献企業の認定が取り消しになったという話は聞きません。インセンティブを与える以上はしかるべき処分があって当然だと思いますけどね。

江森:指名停止レベルでは認定取り消しはありませんが、過去に助成金の不正受給で取り消しになった例はありましたね。

石井:それは当然だと思いますね。またいわゆる「インセンティブ狙い」で認定をとる企業も中にはありますが、最近では社員さんの中にもたいへん意識が高く、CSRについても勉強されている方もたくさんいますので、インセンティブ狙いで認定をとったというような発言をすることは、経営者としてとても恥ずかしいことだと認識してもらいたいですね。その程度ならインセンティブなんてやめちゃえばいいんじゃないの?

江森:(笑)。確かに本来の目的から外れている部分もなくはないのでしょうけど、今後インセンティブ発注が行政のSR調達に発展していくと考えれば、あながち悪いことばかりではないと私は思いますね。それには例えば、工事のあとに発注者だけでなく、一般市民など第三者による検証のプロセスを入れるとか、インセンティブ発注の有効性を担保するために現行制度で足りないところを補完していく必要があると思っています。

 全印工連でも、昨年度には全印工連CSR認定制度の完成形ともいえるスリースターができ、すでに4社が認定されています。全印工連CSR認定制度についてはどのように感じていますか。

石井:スリースター第1号のアインズさんはすごいね〜。こんな会社あるんだ〜って、身がよじれる思いがしたよ(笑)。いい加減な経営をしていたら社会から追われてしまうんだという危機感を業界全体で共有して、お互いにチェックしあう仕組みがあるというのは、素晴らしいことだと思います。

 ところで、スリースターで要求しているCSRの「経営上の効果」というのは、本当に測る必要があるの?CSRは結果として「儲かります」であって、「儲ける」ための手段として成立してはいけないものでしょう。それを作為的にCSVとして社会的価値を創ることを意図したものにしていいのかなという疑問があるんですよね。

江森:全印工連の認定制度の場合は、だからワンスターからスリースターまで3段階あるということだと思います。スリースターまで来た企業であれば、CSRの本質は理解できていることが前提ということですね。むしろ経営への効果を度外視して活動してしまうことが往々にしてあるので、経営上の効果もきちんと測ってくださいねという意味があるように思います。もちろん経営上の効果というのは、金銭的な儲けだけでなく、社員が元気になったというような定性的なことも含まれます。

石井:そもそもCSVや社会起業家というのもおかしな言葉で、社会的価値のない商品なんて売れるわけないんだから、CSVじゃないビジネスなんて存在しないし、社会起業家以外の起業家だって存在しないと思うんですけどね。松下電器の二股ソケットだって社会課題の解決でしょ?

江森:まったくその通りだと思いますね。本来社会課題の解決に株式会社かNPOかのような組織形態の違いは関係ないですよね。政策上の都合で行政が区別していることの影響が大きいと思いますが、それによって社会課題が企業にとって他人事になってしまっているところもあると思いますね。

 最後にまとめとして、石井造園はこれからどんなCSRを目指していきますか。

石井:Bコーポレーションという国際認証をとっていますが、「B」は「Benefit」の頭文字です。石井造園がここにあることへの社会全体にとっての利益、価値というものを、もっともっと高めていきたいと思っています。またCSRのおかげで今日もこうやって取材してもらったり、世間からチヤホヤしてもらっているので、その分しっかり財務的な利益も出していかなければいけませんし、事業としても拡大方向に向かわなければいけないと思っていますし、何より経営理念でもある、石井造園に関わった人たちが幸せになる会社になっていかなければいけないと思っています。

※インセンティブ発注 …… 横浜型地域貢献企業認定制度の認定企業メリットのひとつとして、横浜市の公共工事及び委託(いずれも一部の種目に限る)の入札の際に、特定の条件を満たした企業だけが入札に参加できるインセンティブ発注の対象となる。

※SR調達(社会的責任調達)……持続可能な社会の実現の観点から、従来のコスト・品質・納期(QCD)のみならず、環境・人権など、社会的責任(SR)に配慮した調達の必要性が重視されるようになってきている。企業による社会的調達をCSR調達と呼ぶのに対し、行政やNPOなども含めたすべての経済主体の社会的責任調達を「SR調達」と呼んでいる。

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