輝かしい2025年の幕開けを迎え、気持ちも新たに成長と成功への期待に胸を膨らませていることと思います。一方、国際紛争の長期化、世界的右傾化と分断、気候変動の深刻化など人類の持続可能性を脅かす事態が進行しており、企業としてもそれらの対応がいよいよ待ったなしという段階に突入しています。サステナビリティに関して2025年はどのようなトピックがあるかまとめてみたいと思います。
まずは何といっても1月に就任するトランプ大統領の政策に注目が集まります。「アメリカファースト」を掲げる中で、化石燃料の輸入を抑えて国内生産を増やしエネルギーコストを半分にするという意向をすでに示しています。総需要量が増えることによってかえって燃料価格が上がるという見方もあり、エネルギーコストが本当に下がるかどうかは不透明ですが、前回の就任時同様パリ協定からの離脱、ESG投資の規制、ESG開示の方針転換等、国際的な脱炭素の流れにアメリカが竿を刺す可能性が大いにありえます。
このようなアメリカの動きに、他の先進国がどの程度影響を受けるか定かではありませんが、日本国内においては2026年から開始される排出量取引制度に向けて、対象となる300~400社が公に削減目標を設定する年となります。2026年からは排出枠の超過分はそのままコストに跳ね返ってくることになり、大手各社の戦略に注目です。
また2025年は製品原料へのリサイクル材使用を義務付ける法令改正も検討されています。EUではすでに先行して法制化が進んでおり、「リサイクル」や、製品の使用により現状より良い状態への再生を目指す「リジェネラティブ」に注目が集まりそうです。
サステナビリティ開示基準も標準化が進み、昨年からスタートした世界標準のサステナビリティ基準審議会(ISSB)「IFRS S1・S2」の日本版にあたる「サステナビリティ基準委員会(SSBJ)」の中身が3月に最終決定される見通しです。すでに適用がはじまっているEUの企業サステナビリティ報告指令(CSRD)への対応もあり、特にグローバル企業は対応に追われる1年になりそうです。いよいよ“都合のよい情報だけ”の開示では許されない時代がやってきます。
労働人口減少が本格化し、長期的な人手不足時代に突入しています。2023年から有価証券報告書での人的資本開示が義務化されたこともあり、人的資本経営は重要な経営課題のひとつとなっています。人的資本開示が定着していく中で、人材マネジメントにデータを活用するいわゆる「HRテック」がますます広がっていくものと考えられます。また人的資本開示のガイダンス規格である「ISO30414」を採用する企業も増えてくるものと予想されます。
人手不足を受けて障がい者の活用にも注目が集まりそうです。これまでのような義務的な雇用から積極的に戦力として活用する方向に変わっていきそうです。それにともない社会全体としてもアクセシビリティを強化するニーズが高まり、公共施設はもちろん、製品開発やイベント開催などでもデザイン上の工夫やサポートノウハウの蓄積が進みそうです。
2025年はサステナビリティがさらに進展する要素と、逆行する要素が入り混じり、結果としてやや停滞気味、様子見の1年になりそうと予想しますが、トランプ的な極端な保護政策が長期化することも考えにくく、大きな流れとしては2050年カーボンニュートラルを目指すことには変わりないと思われます。企業としてはトランプに少し時間をもらったものと考え、この1、2年で社内のマネジメントシステムを見直し、サステナブル経営への足固めをする時期と位置付けるのが良さそうです。
株式会社ココラボ サステナビリティコンサルタント 江森克治